私的 昭和テレビ大全集
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新選組血風録 (1965)

新選組血風録

只今、腐敗臭漂う地上波テレビなんぞ見ている暇が有ったら、
お金を出してでも絶対に見ておく価値ありとワタクシがお勧めする、
過去のテレビ作品を紹介中です。
今回は、60年代時代劇の中から、何度もここでもその存在に触れてきたこの番組を、
満を持してご紹介したいと思います。



活動写真の昔、時代劇というのはなんと言っても動きのある殺陣(たて)が華で、
時代劇=チャンバラという認識が、テレビ時代となったその後も支配的に続きました。
もっとも、初期のテレビは激しい動きを捉える事ができず、生放送という制約もあり、
思うようにチャンバラを表現できないという物理的な枷と、
時代劇を充分こなせる人材がいないという状況の故に、
チャンバラよりもドラマ性の強いものが多かったろうと思います。
フィルム撮りとなり、映画の人間が大挙してテレビに流れ込んでくると、
テレビ時代劇も一躍花咲き、見栄えの有るチャンバラシーンが楽しめるようになりました。

この番組は、丁度そうした流れの端境の頃合いに制作されております。
翌年には、東映時代劇の大御所である大川橋蔵が、ついにフジテレビに銭形平次で登場。
堰を切ったように映画界からテレビ界への人材流入が加速してゆくのです。
しかしこの番組が放送開始した頃は、テレビが映画より力を持ち始めたのは明らかながら、
悪名高き五社協定もまだ完全には無力化されておらず、
映画のスターがテレビ画面に出るというハードルは、存分に高いものでありました。
東映の制作でありながら、従ってこの番組でもスターは不在。
唯一、第1話に往年の大スター・嵐寛寿郎がゲスト出演したのが目立つくらいです。

ところが、この端境の時代が醸し出す空気こそがこの番組を迸らせた。
この番組での主役となる土方歳三を演じた栗塚 旭(あさひ)も、
それまで代表作の無い無名の役者。
しかし、そんな存在だったからこそ、訪れた機会を逃すまいと、
まだ映画界からは馬鹿にされていたテレビ映画に、懸命の力を込めたのでしょう。
狂気を孕む幕末という時代と、若き懸命な滾りが一体化してしまうのです。
所詮は人間の所業。
運命とか時代という要素は如何ともし難く、この時の栗塚の演技は、
今のテレビで誰がやったところで、決して追いつけるものではありません。

しかし、それをも更に上回った奇跡が、沖田総司を演じた島田順司でした。
今日に至るまで、新選組の若き花形・沖田総司と言えば、二枚目役。
しかし、沖田の親戚を元にして作られた肖像画などから推察するに、
現実にはそうした存在ではなかったと思われます。
ちなみに、土方歳三は残っている写真も今日視点でも二枚目ですし、
残されている実見談でも、いい男だったとするものが有り、
修業時代の胴を、当時としては非常に目を惹く赤色にしたりと、
外見も振る舞いも若い頃は気障にも映る伊達男だったりしたようですが。

で、そんな沖田総司役となった島田順司が、その肖像画を彷彿とさせる、
もう、沖田が幕末から抜け出してきたのではと思わせる存在。
演技はまだお世辞にも上手いとは言えなくも、飄々とした雰囲気が
司馬遼太郎の描いた原作での沖田に、これまた無上に合ったものでした。
この、無骨ばった存在が準主役という位置で展開される事により、
この世界に得も言われぬ現実感が宿っているのです。
斉藤一の左右田一平も、それに近い感じが有りました。
今、NHKすらもジャニタレにおんぶに抱っこ。
演技力は無く無駄に外見だけ綺麗というのを時代劇に使うという、あまりに刹那的発想。
今のテレビ人は、つくづくドラマをぶち壊したいんでしょうね。
皆さん再生願望がお有りで、結構な事だと思いますよ(笑)。

いつも言うように、名作というのは、まるで創作の神の示し合わせであるかのように、
隅から隅まで力を持っていたりします。
特に番組の顔とも言える導入部である主題歌に関してはより強く感じる部分で、
この番組でも、渡辺岳夫作曲、春日八郎の歌による『新選組の旗は行く』は、
テレビ時代劇史上でも屈指のオープニング映像だと思います。
曲も素晴らしいが、高橋椈太郎による詞がまた超一級。
流石は『酒は涙か溜息か』を作詞した人物と唸らざるを得ません。
勿論、結束信二による脚本、河野寿一らによる演出も素晴らしかった。
特に結束の脚本は、新選組という存在をよく知悉していた事が偲ばれ、
それに加えて虚構ならではの見せ方も心得た、時代劇脚本の巨星だと思います。

原作は、司馬遼太郎が書いた新選組を描くオムニバス小説で、
独立した数本の話で構成されています。
そちらも勿論面白いのですが、特にこの番組の前半部分に於いて、
ハッキリと番組が原作を凌駕してしまった感が有ります。
第1話『虎徹という名の剣』の最終場面では、原作通りに
現存する近藤勇の郷里宛の手紙の最後を読み上げて終わります。
その部分を、土方役の栗塚が読み上げるまま書いてみます。

「新選組の名は、やがて日本中に響き渡っていった。近藤勇の、虎徹の誉れと共に。
 近藤は、池田屋の斬り込みを、誇らしげに江戸の養父(天然理心流前宗家)に書き送ったという。
 『かねて徒党の多数二十四名を相手に火花を散らし一時(いっとき)余りの戦闘に及び候
  何れも相手は万夫の勇士 真に激しき斗いに及び候ところ 永倉新八 沖田総司の刀は折れ
  藤堂平助始め 隊士の多くの者の刀は ささらの如く乱れ候えども
  拙者刀は虎徹に候えば 何事も無く無事に御座候』」
そして、誇らしげに誠の旗を掲げ悠然と歩く隊士たちが画面に向かってきて終わるのです。

もう、その迫力にジーンとなったものでした。
いや、過去形ではありません。
いま見ても、何度見ても、この回を見終える時には胸が熱くなります。
それは、珠玉の一篇を見た事による感動なんです。
演者、脚本、各制作者、音楽、そして演出者。
もう、全てが足掻いてるんですよ。
その足掻きが、得も言われぬ迫力を生みだしていて、
その力が、見終えた時に感動として収束するのです。
美しいものを認識した時、人が感動を覚えるのは自然の衝動でしょう。

最後、この近藤の手紙で終わるなんて、いまのテレビ人は絶対にやらないでしょう。
何故なら、彼らは視聴者を愚弄し、ひいては表現を愚弄しているから。
彼らは視聴率絶対思想に毒され、わかりづらい表現を嫌います。
子供でも理解できるような表現のみが万人に愛されると曲解しているから。
それ故、テレビから芸術性というか、解る人間がより深く楽しめるという描写が消えました。
具体的に解りやすい例を挙げれば、水戸黄門的な定型的番組作り。
これまた、正体は電通マーケティングなんですけどね。
でも、特に子供がそうなんですけど、解らなくたって力を持っていれば惹かれるんですよ。
昔は、子供が大人に憧れて大人の番組を理解しようと背伸びをした。
今は子供の次元に視線を落としているから、どれもこれもコクが無く、幼稚なものばかり。
もうテレビは表現としてはとっくに死んでいます。本人達が無自覚なだけで。

その第1回は、講談でも有名な近藤勇の佩刀・長曽根虎徹が、
実は本物の虎徹ではなかったとする幾つかの資料を基に原作で描かれたもので、
その原作も非常に面白いものでしたが、ドラマもまたそれを膨らませております。
近藤勇は、偽物であろうと、それが本当に斬れればその刀を虎徹として愛した。
そういう作り事が近藤勇という人物像を膨らませ、この作品の代表的一篇であります。
そうした頓着しない近藤という人間に、舟橋元がよく合っていた。
時系列からすれば多少無理が生じるのですが、この作品を第1話に持ってきたのは、
やはり正解だったでしょう。
そして第2話は筆頭局長・芹沢鴨の時代に戻り、以後は時代通りに話が進んでいきます。

芹沢鴨は水戸天狗党の残党と伝わり、その出自も有って、
新選組結党初期の筆頭局長とされ、近藤より序列が上でした。
ところが彼が、京市民に語り草になる無頼漢。
宴席で狼藉を繰り返しては店の者に迷惑を撒き散らしたり、
あまつさえ禁裏そばで商家に火を放つに至り、
遂に新選組を召し抱えていた京都守護職が見かねて、近藤らに粛正を命じたとされます。
劇中では『銭形平次』の万七親分として後に親しまれる遠藤辰雄が、
彼を非常に不貞不貞しく演じていて、引き込まれました。

第1話、そして芹沢一派との鬩ぎ合いを描く第2、3話は、
本当に情念の火花すら感じる迫力の名篇となっており、
もってこのドラマは、放送当時より常に解る人たちによって評価され続け、
名作の栄誉を不動のものとしております。
ただワタクシは、原作が消化されてしまった後の、
戊辰戦争後まで描いているのはあまり感情移入できないし、
ドラマとしてみても少し冗漫になったかなと感じます。
しかし、それを勘案しても不朽の、そして不世出の名作とする事、
なんの異存も有りません。
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[猫カフェ]futaha



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コメント
この記事へ寄せられたコメント
半世紀を越えて
ここにも同じ想いの方がいらしたんですね。たぶん私のほうがずっと年上でしょうが。
「燃えよ剣」はリアルタイムで嵌まっていましたが、さすがに「血風録」は本放送は観ていません。ビデオはおろか番組情報も得難い時代、深夜や地方UHFを探しまくる日々でした。勿論、毎年行われていた上映会なんて知る由もなかったです。(上映会のおかげで早くからビデオ化、DVD化が可能になったのですが)数年前、DVD全巻購入で”恋人”にやっと会えました。

26話の中でも出来のバラつき、もしくは好みの差はあります。鳥羽伏見以降は、私にも確かに冗漫にも思えますが、「風去りぬ」だけは、沖田と斉藤のつながりだけでも見応えあり、と思っています。(ただ、「風去りぬ」は脚本のノリ?の都合で早い時期に撮影されたそうですが)
2012/10/28(日) 09:28:50 | URL | junjun
さすがに、12チャンネル版『燃えよ剣』はご覧ではなかったでしょうが(笑)。
あれも杉良太郎さんの時代劇デビュー作で、なかなか良い雰囲気っぽかったようです。

地道に支持し続けてきた人々のお陰で、ワタクシもビデオを見る事ができたわけです。
いずれはCS時代になっていたとは言え、埋没して見ていなかった可能性も考えると、
やはりファンの地道な支持というのは貴重です。

全巻購入、羨ましい。
ワタクシは2巻目で早くも挫折しました(笑)。
もう少し特典映像が有ったら違っていたかもしれませんが。

沖田さんと齋藤さんは、現実にはあまり交流が伝わってませんけどね。
どちらも近藤道場で修行した、ほぼ同年代なのに。
まあ沖田さんに限らず、不思議と齋藤さんの近藤道場との関係話がまったく伝わっていないのですが。
2012/10/30(火) 22:36:09 | URL | ごいんきょ
新選組血風録に魅せられて。
新選組血風録を見たのは中学3年生。そしてそれを見た事で自分の人生は彩り濃いものとなった。高校に上がる前に番組内の清水寺、音羽の滝を見に九州から一人旅。大学時代に始まった燃えよ剣に夢中になるも、血風録の方が優れていると、どうしてもまた見たくなり、30代の頃、結束信二先生に手紙を書き、異例のビデオを入手。DVDが出るまで自分の宝物とする。
沖田総司の様に爽やかに生きたいと願いつつも
10代の頃の影響で土方歳三の様にナンバー2で
生きる生き方で人生をやってきた。
そして、その生き方に悔いは無い。
2016/11/01(火) 22:06:14 | URL | 副長
行きますよねー。行きたくなりますよね、京都(笑)。
それは現今の聖地巡礼なんて浮ついたものではなくて、もう少し学術的な意識に近いものなんですね、
実話が元になっているから。

結束先生にお手紙とは、素晴らしい熱の入れようで。
その当時、脚本家がドラマのファンレターを受けるなんて、
そう多いものでもなかったでしょうから、
先生も喜ばれたのではないかと思います。

テープ時代はビデオも一本一万円を軽く超えましたから、結構な出費だったでしょう。
ワタクシはレンタルでお手軽に済ませ、DVDも2巻で挫折した軟弱者です(笑)。

新選組を実質的に切り盛りしていた土方歳三さんを主役に描いたのは、
司馬遼太郎さんの大金星だったんですよね。
それまでは、土方歳三は冷酷な悪役的な描かれ方ばかりでした。
坂本竜馬さんを万世の英雄に引き揚げたのも、実は司馬さんの「竜馬がゆく」ですしね。
大衆時代小説不世出の巨人でした。
2016/11/03(木) 06:47:20 | URL | ごいんきょ
テレビ時代劇ではピカイチの作品でしょう
新撰組血風録~~リアルタイムで見ていた一人です。
音羽の滝のシーンをテレビ越しに写真を撮った覚えがあります(笑)
当時は栗塚旭さんより やはり島田順司さんのファンでしたね。
二枚目半?位の感じでしたがその辺りが却って新鮮な沖田総司に仕上がってファンの心を捕まえた様な気がします。
島田順司さんも渋いお歳になりましたが、相変わらず舞台にも立っていらっしゃるので生涯現役で素晴らしい事ですね。

この番組が縁で中学生の時に東京のファンの方とペンフレンドになり、現在でも交流は絶えずに続いて居ります。(お互いに姓は変わりましたけれどネ)

2016/11/14(月) 01:05:08 | URL | san悟風
あら。女性の方だったのですか。
当時から女性の新選組ファンは多かったのですね。
島田順司さんの沖田は、古今無双の配役ですよ。
だからこそ、用心棒シリーズでも沖田であり続けてしまいましたが。
まだお元気とは何よりです。
名トリオの左右田さんは先頃お亡くなりになってしまいましたが。

放送当時を見られたなんて、羨ましいことこの上ないものが。
2016/11/15(火) 06:46:38 | URL | ごいんきょ
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